2012年12月01日

蒋介石に棄てられた女 陳潔如回想録


 陳潔如著
 加藤正敏訳
 草思社


ああ。おもしろかった。

陳潔如は、妾も一人と数えれば、蒋介石の三人目の夫人で、(本人以外には誰も断言できないが)おそらく蒋介石が、宋美齢も加えた四人の中で、最も愛したのではないかと思われる女性。

本書を要するに、蒋介石の暴露本。ただ、蒋介石を扱き下ろすことを目的としていないので暴露本特有の泥臭さはなく、むしろ感じるのは、そこはかとない悲しさだったりする。

陳潔如のほうでは大して気がなかったのに、蒋介石の執拗な求愛を受け、15歳にして結婚する。

夫婦であったときには、読んでいるこちらが気恥ずかしくなるような愛のセリフを蒋介石に投げかけられ続ける。

自分とは血のつながらない子を大事に育て、

蒋介石の激しい喜怒哀楽を最も近い場所で見続け、

結局は、「国のために5年間だけアメリカに留学してくれ」と言われて、体よく追い出されてしまう。

この回想録は、蒋家と宋家によって出版が阻止され、その後原稿は行方が知れなくなったが、1990年にスタンフォード大学フーバー図書館で偶然に発見されたのだそうだ。

生身の蒋介石を知ることもできる本書は実におもしろいのだが、日本での出版当時にそんなに話題になったような気がしないのは、おそらくは文中に出てくる史事に誤りが少なからずあるためだろうか。

ただそれは陳潔如が記憶のみに頼り書いたためであって、却って彼女の感情の所在を知ることができ、それによって蒋介石の人間像が一層浮き上がっているように思う。



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2012年11月29日

中国近現代史〔小島晋治 丸山松幸〕


 小島晋治 丸山松幸
 岩波書店


最近買った本ではないのだけど、どうも気になる点があるので、この本のことを書いておきたい。

本書はおそらく、中国近代史を知りたい日本人に教科書のように広く読まれている本である。中国近代史を概説する日本語書籍としては一番売れているんじゃないだろうか。

でもこの本、読んでいると時々「おやっ」と思わせる記述に出会う。

なんだか全般的に共産党寄りなのだ。共産党の対抗勢力であった蒋介石を悪く書きすぎているような気がする。

例えばP151〜P152の1935年幣制改革についての説明。幣制改革は、紙幣の発行を四大銀行に限り、銀本位からドル・ポンドにリンクする為替本位制度へ移行する等の金融制度改革である。

本書は、この幣制改革によって「元はポンドとドルの支配下に置かれ、四大家族を中心とする官僚資本が全国金融を独占するとともに、人民はインフレから身を守る手段(現銀)を奪われてしまった」と、いかにも四大家族が自らの利益のために改革を行い、人民が損害を被ったかのように書いている。

しかし当時の中国は銀価格の高騰による景気悪化に苦しんでおり、また各国は金本位制度から離脱していった時期である。金銀地金を本位とするのは時代遅れとなっており、ポンドまたはドルを本位とすることは必然と言ってもよかった。現銀の国家への集中が行われたのは、根強く残っていた現銀の取引を禁じ、同時に対外支払準備を蓄積するために必要な政策だった。この幣制改革によって中国経済は骨太になった。幣制改革がなければ、中国は日本軍の侵攻に早々に屈服してしまったとも言われる。

この他にも、共産党の肩をもち過ぎ、国民政府の政策を悪く言いすぎる部分が散見される。

おそらくは、筆者お二人の思想が左傾しているというよりも、共産党、または共産党の影響下にある資料をもとに本書を書かれたためであると思われるが、それにしても、広く教科書的に読まれている書籍だけに、ちょっと心配になってしまうのだった。

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2012年11月01日

通貨戦争〔ジェームズ・リカーズ著/藤井清美訳〕


 ジェームズ・リカーズ著
 藤井清美訳
 朝日新聞出版


投資家ブロガーのブログを見ていて、そこで紹介されていたので購入した本。のちには日経新聞にも書評が載っていたので、結構売れているに違いない。

僕がこの本に興味をもったのは、間もなく発行する本(カレンシー・ウォー 小説・日中通貨戦争)とタイトルが非常に近いため。もちろん内容は全然違うのだけれども。

さて、この作品。

冒頭部分は、主人公が軍関連の通貨戦争シュミレーションに参加するという話。いかにも興味深いし、実際読んでいて、「ああ。なんておもしろいんだろう。こんな小説書きたい」などと思っていた。

しかし小説的なのは全11章のうちの最初に2章だけなのであった。

残りは、過去から現代までの通貨にからむ国家間の争いについての説明が延々と続く。もちろんそれ自体もおもしろいテーマではあるのだけれども、小説だと思って読み始めれば、なんともがっかりし、最後まで読むのがつらくなってしまったのだった。

読み終わるのに1か月くらいかかった……
posted by osono at 17:46 | Comment(0) | 読書等

2012年09月10日

鷲と虎〔佐々木譲〕


 佐々木譲
 角川書店


最後の一ページを読み終わった時、「あ〜。おもしろかった」とため息をつける本というのに年に一度くらい出会えるが、この本がまさにそれ。

個性溢れる日本人とアメリカ人のパイロットが、次第に互いが互いを意識するようになり、最後には、藤沢周平の時代小説か三国志演義さながらの、武士道対騎士道という感じの空中一騎打ちを行う。

男くさいが潔くて爽やかで、ダントツの技能を有し、上司に嫌われても部下には、命を賭しても護られるほどに慕われる。そんなヒーローとヒーローがぶつかる物語。

この小説、「中国的天空―沈黙の航空戦史」〔中山 雅洋〕がネタ本であろう。こちらは戦前の中国空軍を描いたノンフィクションだが、これを読んだ時も、あぁ、おもしろい、と思った。

戦争を美化するようなことを書くのは気がひけるが、日中戦争初期の頃の日中両空軍の動きは実におもしろいのだ。なにしろ、両国の資料を追えば、誰が誰を何時何分に撃って、どうなったかというようなことまでわかる。数々の名勝負が繰り広げられ、墜落して捕虜となったものを丁重に扱った美談などもあるし、中国空軍には高志航という天才的技量をもつ空のスーパースターが登場する。


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2012年08月20日

孫文〔陳舜臣〕


中国近代史のものを書いていると必然的に孫文につきあたる。

中国国民党について書いているつもりのときも、蒋介石について書いているつもりのときも、汪兆銘について書いているつもりのときも、宋慶齢について書いているつもりのときも、いつのまにかに孫文について書いていたりする。

で、孫文について勉強しなくちゃと思い、まず手に取ったのが本書。

この本。。。ちょっと妙だった。

まず、冒頭は物語においてさして重要な位置づけにない登場人物の船の上での会話。いかにも小説風なのだが、小説風なのはこの冒頭部分のみと言ってもいいかもしれない。

上下巻のほとんどが、孫文が何をしたとか、どこに行ったとか、孫文の行動と歴史的事実の説明。

まあ、孫文について勉強するために読んでいる僕にとってはそれでもいいいのだけれども、小説を読もうと思って購入した人には「おや?」と思う内容に違いない。

そのうえ、勉強のために読んだ僕にとっても不満だったのは、この本、1912年の元旦、つまり孫文が南京で中華民国臨時政府の大総統に就いたところで終わっているのだ。周知のとおり、このあとも第二革命、第三革命と続き、孫文は波乱万丈な生涯を歩んでゆく。野球に例えるならば三回の表裏が終わったあたり、会社経営に例えるならば初年度決算を終えたあたり、フランス料理ならばワインが注がれてテイスティングをする直前あたり。すなわち「おいおい。それからどうなるんだ」と突っ込みたくなる場所で物語が終わってしまうのだ。

もっといろいろ読まなければ、孫文がみえてこない……


孫文 上 武装蜂起
孫文 下 辛亥への道
陳舜臣
中央公論新社

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2012年07月30日

The Last Empress Madame Chiang Kai-shek


宋美齢の生涯を記した書籍。

全792ページ。届いた時、電話帳が来たのかと思った(汗)

宋美齢について、現在わかり得ることの全てが書かれていると言っていいと思う。

とは言っても、とてもじゃないけど全部は読んでいない。必要なところを拾い読みしているだけなので、書評するなどという、おこがましいことはとてもじゃないけどできない。

ちなみにアマゾンでの購入価格は1761円。アメリカで20ドルの本なので、非常に良心的な価格。


The Last Empress Madame Chiang Kai-shek and the Birth of Modern China
Hannah Pakula
Simon & Schuster Paperbacks
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2012年07月22日

我は苦難の道を行く 汪兆銘の真実

日本の実質的傀儡政府である南京国民政府主席であった汪兆銘について、英才と称えられた少年時代から名古屋で不遇のうちに没するまでを描いている。

中国の近代について三部作を書くつもりで、うち二本を書き終わり、今、残りの一本を書いている。最初の一本は1937年7月から1940年2月まで、二本目は1938年2月から1942年12月までが主要な舞台であり、今書いているのは1926年11月から1935年11月までが舞台となる予定なのだが、各作品の主人公と準主人公を除けば、汪兆銘の名は、おそらくベストスリーに入るほどの頻度で作中に出てくる。登場人物としてではなく、主人公等による会話の中や、歴史背景の説明において名前が出てくるのだが、汪兆銘は近代の日中関係史において、それほどまでに重要な人物ということ。

この本をめくるまでは、汪兆銘で小説が書けるかも、と、少しだけ思っていた。

男前なんである。日本と中国において、彼よりも外見のいい歴史上の重要人物っているのだろうか。すずやかな目元と均整のとれた顔立ち、頼りがいのありそうながっちりとした身体。身長もかなりあるようだ。1927年10月に撮影された胡漢民、孫科と三人で並んで立つ写真を見ると、胡漢民より10センチ、孫科に比べれば20センチは身長が高いように見える。

頭脳明晰で、孫文の後継者の筆頭とも目され、一刻も早い日中和平が必要との考えから新政権の首領に就任した。しかし日本にいいように使われて最後は寂しく亡くなる。そんな悲劇的な一生も小説になるように思った。

しかしこの本を読んでいるうちに、その気は失せた。

この人、すぐに逃げちゃうんである。権力抗争に負けると、すぐにフランスに外遊に出てしまう。ものすごく逃げ足が速い。

この人、トップになりたい病だったんじゃないかと思えるのである。人民の生活水準の向上を目指していたというよりも、自分が政権の首領になることが全ての目標だったような感じなのである。1927年4月には蒋介石の誘いを断り、「労働者と農民の扶助が孫文の遺志だ」と大見得を切って共産党との合作を続ける国民党左派に合流するのだが、劣勢が明確になってくると、わずか3か月後に、虐殺とも言われる共産党の粛清を行ってしまう。

現代において「国賊」とされているのはあんまりだし、なかなか立派な人物だと思うのだけど、小説の主人公になるほどのヒーローでもない。

ちなみに汪兆銘を知るには「我は苦難の道を行く―汪兆銘の真実」もいい。


人われを漢奸と呼ぶ―汪兆銘伝
杉森 久英
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2012年04月25日

アーサー・ニコルス・ヤング

アーサー・ニコルス・ヤング(Arthur N. Young)は1890年生まれのアメリカ人。

1929年にアメリカからの金融顧問団の一員として1年間の予定で中国に来たのだが、任期満了とともに帰国せず、アメリカ国務省を退職して中国国民政府の経済顧問に就いた。

1937年までは上海に住んだが、国民政府の移動とともに武漢、重慶と居を動かす。

妻のエレンを連れて上海から香港へと逃れたのは1937年末の南京陥落直後のクリスマスの頃。香港のホテルでのディナーのあと、暖炉の前でエレンに「自分は内陸に行かねばならない」と告げた。一週間後、エレンは涙を流しながらアメリカへ帰っていき、ヤングは武漢へと向かった。

ヤングは、全くの異文化で、かつ戦時下にあった中国に、実に20年もの長期にわたって滞在する。時に蒋介石や孔祥熙、宋子文などに金融や財政分野でのアドバイスを行い、日本との熾烈な通貨戦争を戦いぬき、勝利するのであった。

ヤングの業績については、本人著の
「China’s Nation-building Effort,1927-1937」Hoover Institution Press
「China’s Wartime Finance and Inflation, 1937-1945」Harvard University Press
「China and the Helping Hand, 1937-1945」Harvard University Press
に詳しい。
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2011年07月25日

アマゾンcn

61489_1.jpg中国の書籍でどうしてもすぐに手に入れたいものがあり、検索していたら、中国のアマゾンで売られているのを見つけた。


8月上旬に上海に行くので、その時に受け取ろうかと思いつつ、「ひょっとして」と思ってヘルプ画面を見てみると、海外へも発送すると書いてある。


試しに日本で受け取ってみることとした。


ちょっと不安だったが、それが本日届いた。ヘルプ画面には10日くらいかかるようなことが書いてあったが、5日で届いた。これは便利。


ただ、日本での配送がUPSで、配達時間の指定をできないのがやっかいだ。昼間に家に誰もいなければ、自宅で受け取るのは難しい。日本のクロネコや佐川で届けてくれればいいのに。


それから送料。240元もどかかった。何冊かまとめて買うのならいいけれども、今回のように15元の本1冊が欲しい場合には、なんだかバカバカしい。
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2009年03月30日

駄作

映画のおはなし。

ツタヤの店内を歩いていてふと気付いたのだけど、僕は元来駄作にであう機会が多いほうだと思う。

決して「映画好き」の部類ではないけれども、昨今結構の数の映画を見ている。1か月に、往復を2回と数えて、たいてい4回以上飛行機に乗る。飛行機に乗れば映画を見る。短い上海−東京線なら1本、その他の線なら2本。飛行機以外でも毎月平均すればDVDで2〜3本見るだろうし、映画館にも1〜2か月に1回くらいは行く。都合一か月に10本近く映画を見ているに違いない。

もちろん世間には月に10本映画を見る人はいくらでもいるだろうけれども、映画評論家とかでもなければ、そのほとんどは数ある選択肢のうちから選んで見るものに違いない。でも飛行機の中でばかり映画を見ている僕は、どうしてもつまらん映画に出会ってしまう。飛行機の映画は月単位で変わるので、月初はいいけれども、月の後半には大して見たくもない、評判も聞いたことがないような映画を見ることになってしまう。そして、駄作にであってしまうのだ。

昨日ツタヤの中を歩いていて「これ駄作!」「あっ、これもつまらんかった!」と指さしたのは「ラスベガスをぶっつぶせ」と「舞妓haaaan」。ちょっと前に見た「相棒」もつまらなかったなぁ。世間では結構人気のあるテレビ番組の映画版なようだけど、全くもって理解できん。さらに遡ると「戦国自衛隊」もつまらんかった。ず〜っと昔に薬師丸ひろ子が出ていた戦国自衛隊は楽しんだだけに残念。

ただ「つまらん」と理由も言わずに叫んでいるだけでは小学生低学年児のケンカみたいなので、なぜつまらないのか考えてみるべきなのだけど、はっきりした理由は思いつかなかった。共通するのは、感動もおどろきもない、という点かなぁ。でも小説なら、川端康成の作品とか、感動もおどろきもなくても名作と言えるものはあるよなぁ。小説はやはり行間を読む、という作業があるからかなぁ。

感動やおどろきの有無とは関係なく駄作と思うものもある。「グリーンマイル」とか「火垂るの墓」とか。悲惨すぎるもの。これらも文字で読めばいいのかもしれないけど、映画は二度とみない。

以上、ネタ不足のおり、誰の役にたつのか全く分からん話を書いてしまった。相当のサディストを除いて、駄作と言われて見る人もいるはずもないのであって。。。

ところで上記を見ると、要は邦画に駄作が多いようにも見えるけど、ちょっと前に見た「ハッピーフライト」はおもしろかった。一昨日見た「僕の彼女はサイボーグ」も結構楽しめた。

決して、僕の映画評価に、綾瀬はるかがでているということのみが影響しているわけではない(と思う)。



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posted by osono at 00:00 | 読書等