以前は職業柄、講演のお話をいただくことも少なくなかったのだけれども、なんどやっても満足のいくようにしゃべれない。そしてあるとき、「どうやら自分は人前で話すことがヘタらしい」と気がついた。そう思ってからは、講演会のみならず、パネルディスカッションも、テレビやラジオの出演も、宴会でのスピーチすらも、大勢の前で話すような機会は極力避けるようになった。
なんとなくモノ書きが性に合うと思うのは、公表前になんどでも書き直すことができるということも理由のひとつだと思う。僕が小説を書くときは、最初にサッと書いてから、ペンキ塗りをするように、なんどもなんども修正をしていく。最初に書いた文章は、最後にはほとんど残っていない。
講演をいったん断りだすと、やがて依頼もこなくなり、その後5年ほどは全く講演をしなくなった。
が、昨年から機会があればボチボチ人前でも話すようになった。ゲンキンな話しだけれども、自分の本を売りたいからだ。テーマはもちろん自分の本の内容限定である。
しかしながらヘタなのは相変わらず。講演後、いつも若干の不快感がある。
昨日の講演もそうだ。いや、講演というよりも少人数を前にする気さくなスピーチという感じで、スピーチ自体はウマイもヘタもあまりないのだけれども、ひととおり話し終わったあとにいろいろと質問に答えているうちに調子にのってしゃべりすぎてしまった。「上海エイレーネー」の主人公のモデルである鄭蘋如が最後にはどうなるか、とか、いわゆるネタバレをやってしまった。「龍馬がゆく」を読む人はみな最後に龍馬が暗殺されることを知っているだろうし、「三国志」なら蜀が早い段階で滅亡することを知ってみな読むのだろうから、史実なら歴史小説のオチを話してしまってもいいような気がしてしまったのだ。でも、鄭蘋如についてはよく知らない人も多く、僕が話したことによって本を買ってくださったかたの楽しみは確実に何%か減ってしまったことだろう。
昨夜の帰り途。僕は後悔した。昨夜から今朝にかけて、泥沼の中を歩くように気分が重い。
昨夜の会に参加くださった方々。ほんとうにごめんなさい。
この記事を「いいね!」と思った人も思わなかった人も、
何かを感じた時は是非ポチッと!↓↓↓
何かを感じた時は是非ポチッと!↓↓↓
【日記の最新記事】