夜中の外灘探索の最後は上海クラブ(現ウォルドーフ・アストリア上海オン・ザ・バンド(上海外灘華爾道夫酒店))。

上海クラブについては「上海エイレーネー」の中で(61ページ)次のように説明した。
上海クラブは在上海イギリス人の社交の組織である。会員のほとんどはイギリス人で、入会審査が厳しく、日本人のメンバーはわずかに同盟通信社中南支総局局長の松本重治と在華紡績同業会理事長の船津辰一郎の二人しかいない。地下室を含めて六層のビルの中にはレストランやバー、チェスルーム、シガールーム、宿泊施設などがある。内装は日本人建築家の下田菊太郎によるが、調度品の多くはイギリスから輸入した最高級品であり、エレベーターもイギリスから直輸入されたものが使われている。

バーについては62ページで次のように書いた。
四面鏡板のバーには客がまだまばらで、密談には最適な空間だった。
カウンターに並んで座るとすぐにバーテンダーがカウンターを横滑りしてきて二人の前に立った。そして二人に対してラストネームとともに形式的な挨拶をしたあと、無表情のままでオーダーをとり離れていった。
(中略)
エドマンドはカウンター越しのバーテンダーの立ち位置をちらりと確認した。松本の声が大きく、会話を聞かれないか気になったのだ。このバーの三十メートルもあるカウンターは東洋一の長さと言われており、ひとりのバーテンダーが担当する範囲も、それは東洋一ということはなかろうが、ずいぶんと広い。幸いバーテンダーは二人から五メートル以上離れたところでシェイクを振っており、二人の会話は聞こえていないはずだ。

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