
(写真は「上海影視楽園」にあるレプリカ)
いつごろからだろうか、僕はなんだか彼女に魅かれ、その気持ちは募っていった。そしていつしか、彼女のことをなんらかのかたちで書きたいと思うようになった。
そんなわけで、「上海エイレーネー」では彼女に重要な役割を演じてもらった。
彼女を慕いはじめて以来、僕の頭の中にはずっとひとつの光景があった。
女神像とそれを見上げる少女。背後に太陽があって、シルエットになったふたりが見つめあっている……
「上海エイレーネー」冒頭の女神像と少女とが会話する場面はわずか2ページしかないけれども、僕のあたまの中では何年もの間あたためられたシーンなのだ。このシーンのイメージがまずあって、それを膨らませているうちにこの物語ができあがったといってもいかもしれない。
彼女は太平洋戦争勃発とともに上海に侵攻してきた日本軍によって撤去されるのだが、それと同時に上海は暗黒の時代に突入する。
以下は本作末尾に載せた「モデルとした人々のこと」からの引用。
勝利の女神像は、黄浦江のほとりに立ち上海の街を見守り続けた。しかし1941年12月、太平洋戦争開戦とともに日本軍が上海租界に進駐し、ほどなくして女神像は日本軍によって取り壊されてしまう。日本軍は勝利の女神像を欧米支配の象徴とみなし、それを撤去することにより、日本は上海を解放したのだと喧伝したかったようだが、却って日本の横暴を内外に示す結果となった。上海の富や人材は四散してしまい、第二次大戦終結によりいったん上海は活気を取り戻すが、その後の共産党の勝利によって再び沈む。女神像の撤去以降、上海は守護神を失ったかのように約半世紀にわたる沈滞を経験することになる。
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