2013年01月23日

通貨戦争の始まりなのか?

円安が一服してしまっている。

その大きなきっかけとなったのがいわゆる「甘利発言」。政府内より円安の弊害を指摘する声がちらほらと聞こえるようになっている。

もうブレたのか、と思い、開いた口がふさがらなくなった。

円高はデフレの最大の原因であった。アメリカやギリシャなどで起こった問題は円高というルートを通じて日本に波及した。円高が日本経済に悪影響を及ぼしているのは明らかだが、その退治は国際的に容認されにくいので、今までの軟弱政権では円高を退治することができなかった。しかし安倍さんは円高に真っ向から立ち向かうと約束し、その姿勢を国民は評価して、衆院選で自民党を大勝させた……

のに、もう円安を警戒する発言である。


18日の日経朝刊には「円安の行き過ぎリスク」というタイトルの記事が掲載されている。冒頭部分には

「円安は、輸出企業の利益を増やすが、輸入価格の上昇によって消費者の購買力を減らす。円安によるインフレ期待は、株や不動産などの資産価格を上昇させるが、潤うのは資産家と企業だけだ。この格差の拡大が景気を回復させることはまずありえない」

とある。

この文章、おかしい。

「円安は、輸出企業の利益を増やすが、輸入価格の上昇によって消費者の購買力を減らす」……本当にそうだろうか?「輸出企業の利益を増やす」は正しくても、「消費者の購買力を減らす」は疑わしい。

「円安によるインフレ期待は、株や不動産などの資産価格を上昇させるが、潤うのは資産家と企業だけだ」……本当に「潤うのは資産家と企業だけ」なのだろうか?

「この格差の拡大が景気を回復させることはまずありえない」……仮に「格差の拡大」が正しいとしても、果たして「景気を回復させることはまずありえない」と結論づけることができるのか?なぜそう言えるのか?

マクロ経済的に言えば、通貨高によって増加する対外直接投資によって、資本輸出国では労働者から資本所有者への所得再分配が発生する(それが労働組合が資本輸出に反対する理由である)。通貨安の場合はその逆を考えればいいのであって、資本所有者から労働者への所得再分配が発生する。

つまり理論的には、円安によって労働者の実質給与が上がるのではないかと考えられるのだ。

確かに円安によって得をする人と損をする人とが出てくるだろう。

しかし全体としては、円安によって国は潤う可能性が高い。

円安批判を行うのであれば、そのあたりを理解した上でしなくてはならない。

イギリスから、日本の通貨安政策を非難する声が聞こえてきた。

このまま円安政策が続けられる限り、国外からのこういう声は一層強くなっていく。

通貨戦争とは、拙著「カレンシー・ウォー」でも触れたとおり、一般的には通貨安競争である。日本はこれまで負け続けてきたのだから、少々の円安でも以前の負け分と相殺という感じだが、他国はそうは考えない。日本は通貨戦争を仕掛けているとみられてもしょうがない。

安倍政権はそれに怯まずに初志を貫徹できるのだろうか。それともいままでと同じで外圧に弱い国であり続けるのだろうか。

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posted by osono at 14:58 | Comment(0) | おかしいと思うこと