陳潔如著
加藤正敏訳
草思社
ああ。おもしろかった。
陳潔如は、妾も一人と数えれば、蒋介石の三人目の夫人で、(本人以外には誰も断言できないが)おそらく蒋介石が、宋美齢も加えた四人の中で、最も愛したのではないかと思われる女性。
本書を要するに、蒋介石の暴露本。ただ、蒋介石を扱き下ろすことを目的としていないので暴露本特有の泥臭さはなく、むしろ感じるのは、そこはかとない悲しさだったりする。
陳潔如のほうでは大して気がなかったのに、蒋介石の執拗な求愛を受け、15歳にして結婚する。
夫婦であったときには、読んでいるこちらが気恥ずかしくなるような愛のセリフを蒋介石に投げかけられ続ける。
自分とは血のつながらない子を大事に育て、
蒋介石の激しい喜怒哀楽を最も近い場所で見続け、
結局は、「国のために5年間だけアメリカに留学してくれ」と言われて、体よく追い出されてしまう。
この回想録は、蒋家と宋家によって出版が阻止され、その後原稿は行方が知れなくなったが、1990年にスタンフォード大学フーバー図書館で偶然に発見されたのだそうだ。
生身の蒋介石を知ることもできる本書は実におもしろいのだが、日本での出版当時にそんなに話題になったような気がしないのは、おそらくは文中に出てくる史事に誤りが少なからずあるためだろうか。
ただそれは陳潔如が記憶のみに頼り書いたためであって、却って彼女の感情の所在を知ることができ、それによって蒋介石の人間像が一層浮き上がっているように思う。
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