
主人公花蓮のモデルである瓦氏夫人について、なにしろ500年前を生きた人なので、伝承や史料のなかには「ほんとかなぁ」と思ったり、「いやいやいや、そんなわけないでしょ」とツッコミたくなるものが結構ある。その一部は小説中になんとかリアリティが出るよう工夫して採用したけれども、バッサリと落としてしまったものも少なくない。
例えば「長奶夫人」、すなわち、瓦氏夫人は乳房が極端に長かったという伝承。騎馬で出撃するときに乳飲み子を背負い、背中の子が泣くと馬を駆ったままで乳房を出して乳をやったという話。これは伝承というより伝説もしくは神話といったほうがいいかな。瓦氏夫人には実子はなかったと思われ、あったとしても領主夫人なのだから乳母がいただろうし、そもそもゴムゴムの実でも飲まずに乳房がそんなに長くなるとは思えないし。中国の他の地域でもこの手の話が語り継がれているようだから、これは女性の武勇を表現するための形容詞のようなもので、500年の年月が流れるうちにいつのまにかに稀代の英雄瓦氏夫人にもあてはめられてしまったのだろう。
でも、非現実的というだけでなく、なんか美しくないので物語中には採用しなかった。
(つづく)
『花の舞う海〜倭寇に勝った女の物語』
(5月末にかけて連載中。7月頃まで無料公開予定)
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