賢者のVR
オー・ヘンリの短編小説『賢者の贈り物』は、互いを思いやる夫婦の行き違いを描いた名作ですが、本『賢者のVR』はそのオマージュで、仮想現実の世界のなかでの男女の行き違いを描いています。
本作の主人公は、妻を嫌いではないけれども出会ったころのようなときめきはもはやなく、もういちど誰かと燃え上がるような気持ちになりたいと感じています。しかし彼は過去の浮気が原因で極度に妻を恐れており、とても浮気などできないと思っています。
ある日友人に、人間相手ではなく人工知能相手であれば浮気も問題とはならないと説かれ、彼はVRL=仮想現実恋愛サービスを利用してみることにしました。
コンピューターが作り出した相手はまさに理想的で、彼女との恋に熱中し一夜をともにします。ところが、仮想現実の枕の上の仮想現実の女性が口にしたことばに驚き……
『未来技術奇譚集 素顔のままで』 技術の進歩が社会にもたらす不可思議を描くショートショート8本を収録 電子書籍(Kindleのみ) 発行:2019年6月17日初版 価格:99円(Kindle Unlimitedで 0 円) |